Amazonさんならパズドラを殺してくれると思ったのに……
Amazonが8月3日に定額読み放題サービス「Kindle Umlimited」を開始した。
これまでauの「ブックパス」やdocomoの「dマガジン」などの読み放題サービスがあったが、ついにあのアマゾンが読み放題サービスを開始するということで、かなり話題になっていた。
うちの会社でもどこまで読み放題として提供するかでかなり議論になっていたみたいだ。
まだ本を作ったことのない僕自身は編集者としてこのサービスに関わることはなかったから、一消費者としてすごく楽しみにしていた。
ネット書店として盤石の地位を築いているアマゾンが本気で読み放題を始めたら、どんなものができあがるのか。
もしかしたら、影響は出版界にとどまらず「パズドラ」や「Ameba TV」など、既存の娯楽コンテンツを食い潰すほどのものになり、電車で誰もが電子書籍を読む時代が来るかもしれない。
そんな期待を胸に8月3日、僕は「Kindle Umlimited」を始めたのだが、読み放題のラインナップを見て、正直、失望した。
ビジネス書、実用書はかなり売れ筋商品がそろっているものの、小説や漫画は最近の話題作がほとんどない。
「Kindle Umlimited」開始後の反応も「購読している雑誌が手軽に読める」や「値段の高い専門的な本が安価に読める」などで、「これまで定期的に本を読む習慣のある人が得をする」内容になっているようだ。
「Kindle Umlimited」は出版界の中では、ある程度の影響力があるだろうが、他の娯楽と競争するほどの力はないだろう。
ただ、これは現状のラインナップであれば、ということであってこれから集英社やKADOKAWAなどが参入し、どんどん充実していけば話は変わってくる。
どこぞのキャラクターのように、このサービスがあと数回変身を残していることを期待して、当分980円は払い続けようと思う。
僕が編集長になるためにやること
編集長。出版社に勤める人はこの役職をどのように捉えているだろう。憧れ、目標、もしくは貧乏くじ?
入社して間もない新入社員が何を言ってるのかという話だが、僕は編集長になりたい。編集長になって、自分の信じるものを社会に送り出していきたい。
もちろん、一編集者として本を作り、社会に送り出すことはできる。しかし、企画を通すときも、デザインを決めるときにも必ず上司、編集長、社長の決裁が必要になる。この決裁の過程で、企画が没になったり、当初の構想と180度変わってしまうことも珍しくない。
自分の理想から大きく方向修正した企画を自分は愛し、100%の力を注ぐことができるだろうか……なかなか難しいだろう。
僕は、自分の考え、感覚、経験の全てを社会にぶつけるような仕事がしたい。「うまくいかなかったね~」などと傷をなめあうのではなく、成功も失敗も全て自分に返ってくるような仕事がしたい。
だから、僕は編集長を目指す。
でも、そのためにどうすればよいか? と考えても、今の僕に明確な答えは出せない。そこで、とりあえず十分条件ではなく、必要条件として、「編集長になるために必要なこと」を挙げていきたいと思う。
①ヒットを飛ばすこと
これは当たり前だけど、一番大事なことだ。会社に貢献するようなヒット作を多く出しているような人でなければ、編集のトップは任せてもらえないだろうし、部員もついてこないだろう。
何部売って、何回重版かけて、どのくらい利益を出したか。そういう数字の面で信頼されることが絶対に必要だ。
②出版をマーケティング視点で考えられること
うちの会社にもいろいろなタイプの編集者がいるが、みんな職人然としていて、あまりマーケティングに関心がない。
「いい本を作れば売れる」というのは、間違ってはいないが、「いい売り方をして売れる」本だっていくらでもある。
『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)も『おやすみロジャー』(飛鳥新社)も、ただ出版したら売れたわけではなく、その後のマーケティング戦略があったからこそ、あそこまでの大ヒットになったのだろう。
編集長ともなれば、営業や広報などと連携して、「どのように売るか」を考えられなければいけない。うちの部の編集長もよくマーケティングの話をしているが、そのような人物だったからこそ編集長になれたのだと思う。
③尊敬される知識があること
これは最近発売された『編集』(パイインターナショナル)にも書かれていたが、編集者は文学でも、音楽でも、芸能でもどんなことでもよいから誰にも負けない知識を持ち、面白がられる人間である必要がある。
編集者が一緒に仕事をする先生は人より深い知識を持っている(でないと本なんて書けない)。その先生と対等に仕事をするために、先生に負けない深い知識がなくてはならない、ということだろう。
編集長になるからには、どの先生にも、どの編集部員にも負けない知識の深さが必要になってくるはずだ。
以上の3つが現時点で僕の考える「編集長になるために必要なこと」だ。
今の僕には、これら3つはかすりもしなくて、絶望的な気持ちにもなるが、とにかくこの3つが目下の僕の目標になるだろう。
頑張ろう。と思う。
「入社して驚いたことある?」という質問に驚く
早いもので働き始めて3か月がたった。つまり、編集者になって3か月だ。
おっさんだらけの通勤電車も、どことなく息のつまるオフィスにも徐々に慣れてきたが、いまだに馴れないことがある。
それは「入社して驚いたことある?」という質問だ。この質問、ほんとにみんな聞いてくる。一つ上の先輩から、定年間際のベテランまで、異口同音に聞いてくる。
出版社という特殊な環境に身を置いているという選民意識があるからかもしれないが、僕はこの質問が答えづらくてほんとうに苦手だ。
「本って税別表示なのに驚きました~」などとあまりにも当たり前のことを答えてあきれられたくないし、「露骨な派閥があることに驚きました~」などと正直に答えて会社の微妙なところを指摘するわけにもいかない。
結果、「予想外のことばっかりで勉強させていただいてます~」などと微妙な笑顔を浮かべながら答えるはめになる。就活生の面接かよ。
結局、入社して一番驚いたのは「入社して驚いたことある?」と聞いてくる人の多さかもしれない。